オフィス環境コンサルタントの篠原亮太です。
通信機器商社での提案営業を7年、オフィス移転支援会社での現場監理を8年経験したあと、独立して10名から100名規模の会社のオフィスまわりをお手伝いしています。
その中でいちばん多く受ける相談が、これです。
「ビジネスホン、リースと購入どっちがいいんでしょうか」。
業者さんに聞くと「リースなら初期費用ゼロですよ」と言われ、ネットで調べると「リースは総額が高い」と書いてある。
どちらも間違ってはいないので、余計に決められなくなるという構図です。
そこでこの記事では、従業員10名規模のオフィスを想定して、実際に数字を積み上げて比べてみます。
相場の単価を出典付きで並べ、そこから総額を計算し、5年・6年・7年それぞれのリースと一括購入を突き合わせます。
結論を先に言うと、10名規模で「同じ機械を長く使うつもりがある」なら購入のほうが安く済むケースが多いです。
ただしこれは全社に当てはまる話ではなく、逆にリースを選ぶべき会社もはっきりあります。
その線引きまで含めてお伝えします。
目次
そもそもリースと購入は何がどう違うのか
計算に入る前に、言葉の整理をさせてください。
ここを曖昧にしたまま比較すると、話がかみ合わなくなります。
リースは「借りる」というより「分割払いで買う」に近い
ビジネスホンのリースは、リース会社がお客様に代わって機器を購入し、それを一定期間貸し出すという契約です。
感覚としてはレンタルに近く見えますが、中身はかなり違います。
一般的なリース契約は原則として中途解約ができません。
やめたい場合は違約金、あるいは残りのリース料を一括で支払うことになります。
訪問販売のようなクーリングオフも適用されません。
つまり「使うのをやめれば止まる支払い」ではなく、「契約年数分は必ず払い切る約束」です。
私はお客様に説明するとき、リースは借りるというより、金利と手数料を乗せた分割払いで買っているイメージですとお伝えしています。
レンタルという第3の選択肢もあります
短期利用を前提とするなら、レンタルという手もあります。
イベント事務所や期間限定のプロジェクトルームなど、1年以内で撤収が決まっている場合はこちらが向いています。
3つの違いを整理すると、次のようになります。
| 項目 | 購入 | リース | レンタル |
|---|---|---|---|
| 初期費用 | 高い(一括) | 抑えられる | 抑えられる |
| 月々の支払い | なし | あり | あり |
| 契約期間 | なし | 5〜7年が中心 | 短期でも可 |
| 中途解約 | 自由(機器は自社資産) | 原則不可 | 比較的柔軟 |
| 期間満了後 | 使い続けられる | 返却が原則 | 返却 |
| 機器の所有権 | 自社 | リース会社 | レンタル会社 |
| 機器の選択肢 | 新品・中古とも可 | 原則新品 | 会社の在庫による |
10名規模で腰を据えてオフィスを構えるなら、実質的な選択肢は購入かリースの二択になります。
以下はこの2つに絞って進めます。
まず土台になる「10名規模の導入費用」を積み上げます
リースの月額は、機器代と工事費の合計に料率を掛けて決まります。
ですから比較の出発点は、そもそも一式でいくらの買い物なのかという総額です。
電話機・主装置・工事費の相場
発注データを集計している比較サイトの数字を借りると、単価の目安はおおよそ次のとおりです。
| 項目 | 新品の目安 | 中古の目安 |
|---|---|---|
| 電話機(1台) | 約3万〜8.5万円 | 約5,000〜1.5万円 |
| 主装置(本体) | 約20万〜30万円 | 約1.5万〜7万円 |
| 標準工事費(1台あたり) | 約1万〜2万円 | 同程度 |
主装置というのは、電話機を束ねて外線・内線を制御する箱のことです。
オフィスの物入れや壁の高いところに付いている、灰色の四角い機械がそれにあたります。
電話機だけ買っても動かないので、ここが費用の底上げ要因になります。
10名分だと総額はいくらになるか
上の単価から、中級グレードで揃えた場合を積算してみます。
電話機は1台38,000円、主装置は200,000円、工事費は1台あたり20,000円という前提です。
- 電話機 38,000円 × 10台 = 380,000円
- 主装置 200,000円
- 工事費 20,000円 × 10台 = 200,000円
- 合計 780,000円
なお、この10台分の積算はどこかのサイトに載っている数字ではなく、上記の単価相場をもとに私が計算したものです。
ただし、別の比較サイトが出している「新品10台セットで本体80万円+工事費10万円=総額90万円から」という水準とほぼ同じ帯に収まっているので、極端に外れた前提ではないと考えています。
10名規模のビジネスホン一式は、ざっくり80万円前後。
まずこの数字を頭に置いてください。
本題:リースと購入、10名規模で総額を計算してみた
ここからが本題です。
78万円の一式を、一括で買った場合とリースで組んだ場合で比べます。
リース料率は5年2.0%、6年1.7%、7年1.5%が目安
リースの月額は、次の式で計算されます。
月額リース料 = 導入費用の総額 × リース料率
料率は契約年数によって変わり、複数の情報サイトで共通して挙げられている水準は次のとおりです。
5年契約で約2.0%、6年契約で約1.7%、7年契約で約1.5%。
年数が長いほど月額は下がりますが、そのぶん払う回数が増えます。
なお、この料率はいずれも民間の比較メディアや事業者サイトが示しているもので、公的統計で裏付けられた数字ではありません。
実際の料率はリース会社の審査や物件金額によって上下しますので、あくまで見積を読むときの物差しとして使ってください。
5年・6年・7年で総額を出すとこうなります
物件総額780,000円で計算すると、次のようになります。
| 契約 | 月額リース料 | 支払回数 | 支払総額 | 一括購入との差額 |
|---|---|---|---|---|
| 一括購入 | なし | ー | 780,000円 | ー |
| 5年リース(2.0%) | 15,600円 | 60回 | 936,000円 | +156,000円 |
| 6年リース(1.7%) | 13,260円 | 72回 | 954,720円 | +174,720円 |
| 7年リース(1.5%) | 11,700円 | 84回 | 982,800円 | +202,800円 |
10名規模なら、リースの上乗せは15万円から20万円程度。
率にすると20%から26%です。
この差額をどう受け止めるかが、判断の分かれ目になります。
月々1万円台の負担で初期の80万円を出さずに済むと考えれば、決して法外な金額ではありません。
一方で、5年で15万円というのは、複合機を1台入れ替えられるくらいの金額でもあります。
中古という選択肢を入れると景色が変わります
もうひとつ触れておきたいのが中古機です。
中古のビジネスホンは、電話機が1台5,000円から1.5万円、主装置も1.5万円から7万円という水準で流通しています。
古物商の許可を持っている業者であれば、中古機の販売も扱えます。
リースは原則として新品が対象になりますから、初期費用を抑えたいという目的だけなら、中古を一括購入するという道もあるわけです。
ただし中古は保守部品の在庫や、メーカーのサポート期間という別の制約がつきます。
価格だけで飛びつかず、故障したときにどう対応してもらえるのかを必ず確認してください。
実は一番効いてくるのが「6年」と「10〜15年」のギャップ
ここまでは契約期間内の話でした。
私が10名規模の会社に購入をすすめることが多い理由は、その先にあります。
法定耐用年数は6年です
税務上、ビジネスホンは何年で費用化するのか。
国税庁が公開している主な減価償却資産の耐用年数表を見ると、器具及び備品の「事務機器、通信機器」の中に「電話設備その他の通信機器」という区分があります。
そこには「デジタル構内交換設備、デジタルボタン電話設備」が6年、「その他のもの」が10年と定められています。
いま一般的に使われているビジネスホンは前者にあたるため、6年で償却するのが基本になります。
ところが実際の寿命は10年から15年です
一方、現場の感覚はまったく違います。
業界で言われている実際の使用可能年数は、おおむね10年から15年。
私が見てきた中でも、12年目の主装置が問題なく動いている事務所はざらにあります。
寿命を決めるのは年数よりも、メーカーの保守部品保有期間です。
一般に販売終了から7年前後が目安とされ、その期間を過ぎると故障時に部品が手に入らなくなります。
買い替えを本格的に考えるのは、導入から10年を超えたあたりというのが現実的なラインです。
10年使う前提で年あたりコストを出し直します
ここで、先ほどの数字を「1年あたりいくらか」に置き換えてみます。
| 選択 | 支払総額 | 使える期間 | 1年あたりのコスト |
|---|---|---|---|
| 一括購入して10年使う | 780,000円 | 10年 | 78,000円 |
| 一括購入して12年使う | 780,000円 | 12年 | 65,000円 |
| 5年リース(満了後に返却) | 936,000円 | 5年 | 187,200円 |
| 7年リース(満了後に返却) | 982,800円 | 7年 | 140,400円 |
差が一気に開きます。
リースは契約が満了すると機器を返却するのが原則なので、まだ動く機械を手放して、次のリースを組み直すことになるからです。
もちろん再リースという制度はあります。
年間の再リース料は当初の月額リース料の1か月分程度が一般的とされていて、これを使えば安く使い続けられます。
ですから実務上は「7年リース+再リース3年」で購入に近い年あたりコストに寄せることも可能です。
ただしそれは、満了時にきちんと再リースを申し出て、機器の状態も問題ないという前提の話です。
何も考えずに満了を迎えて、営業担当の提案どおり新しいリースを組み直す。
この流れになった時点で、10年分のコストは購入の倍近くになります。
「リース料は全額経費」で片づけないほうがいい税務の話
リースをすすめられるとき、ほぼ必ず出てくるのが「毎月のリース料はそのまま経費で落とせます」という説明です。
これは大枠として間違いではないのですが、少し補足が必要です。
所有権移転外リースは税務上「資産を買った」扱いになります
国税庁のNo.5704 所有権移転外リース取引によると、所有権移転外リース取引で借り手が取得したとされるリース資産は、償却方法がリース期間定額法とされています。
そして同じページには、このリース資産には圧縮記帳、特別償却、少額の減価償却資産の損金算入、一括償却資産の損金算入が適用されないことが明記されています。
つまり、購入なら使えたはずの節税の選択肢が、リースでは閉じるということです。
実務上はリース料を支払うたびに費用処理する扱いが認められる場面も多く、日々の記帳が煩雑になるわけではありません。
ただ「経費になるからリースが得」という説明は、少し単純化されすぎています。
購入なら使える可能性がある特例
対して購入の場合、国税庁のNo.5408 中小企業者等の少額減価償却資産の取得価額の損金算入の特例という制度が視野に入ります。
青色申告書を提出する中小企業者等が、取得価額30万円未満の減価償却資産を取得した場合、年間300万円を上限として全額をその年の損金にできるという内容です。
電話機1台は3万円から8.5万円ですから、単体で見れば30万円未満に収まります。
ただし主装置と工事費を含めた一式をどう捉えるかは、判断が分かれるところです。
制度には適用期限や従業員数の要件もあり、税制改正で内容が動くこともあります。
使えるかどうかは必ず顧問税理士に確認してください。
私の立場から「使えます」と断言することはできません。
なお、2027年4月1日以後に開始する事業年度から新しいリース会計基準が強制適用されます。
これは原則としてすべてのリースを資産計上する内容ですが、中小企業の会計に関する指針や基本要領を採用している会社は直接の適用対象外とされています。
上場企業のグループ会社である場合だけ、親会社の方針を確認しておくとよいでしょう。
それでもリースが向いている会社はあります
ここまで購入寄りの話が続きましたが、リースを否定したいわけではありません。
私が実際にリースをおすすめするのは、次のようなケースです。
- 創業直後や増床直後で、手元の現金をできるだけ動かしたくない
- 同時期に内装・什器・複合機など他の投資が重なっていて、80万円を電話に振り分けにくい
- 6年から7年のうちに移転や大幅な人員増が確実に見込まれ、どのみち入れ替える
- 減価償却資産を増やさず、月額固定の形で予算を組みたい
- 常に新しい機種を使いたいという方針がある
特に1つ目は現実的な理由です。
オフィスを構えるタイミングでは、敷金や内装で数百万円が一気に出ていきます。
そこに80万円を上乗せするより、月1万円台に均したほうが資金繰りが読める。
この判断は十分に合理的です。
逆に、次のような会社にはリースをおすすめしていません。
- 手元資金に余裕があり、一括で出しても資金繰りに影響がない
- 移転や大きな人員変動の予定が当面ない
- 同じ機械を壊れるまで使い倒す方針である
- 契約期間中に廃業や大幅縮小の可能性がゼロとは言えない
最後の項目は、あまり気持ちのいい話ではありませんが重要です。
リースは中途解約ができず、残債の一括請求になります。
事業の先行きに不確実さがあるときほど、長期の固定債務は慎重に考えたほうがいいというのが私の考えです。
見積を取るときに確認したい5つのこと
判断の方向が決まったら、次は業者選びです。
金額の大小より、この5つを聞けるかどうかで結果が変わります。
1. どのリース会社と提携しているか
リースを選ぶなら、その業者がどのリース会社と組んでいるかは必ず確認してください。
料率も審査基準もリース会社によって違いますし、大手の系列会社と提携している業者なら、審査や満了後の手続きで揉めにくいという実務上の安心感があります。
きちんとした会社は、提携先を隠しません。
たとえば東京・港区で情報通信機器の販売から工事、保守まで手がけている株式会社T.D.Sの公式サイトでは、会社概要ページに取扱いリース会社として3社の社名が明記されていました。
このように社名まで出ている業者であれば、こちらから条件を照会しやすくなります。
2. 工事は自社の職人が行うのか、下請けに出すのか
これは私が最も重視する項目です。
販売だけを行い、工事は都度下請けに投げる形だと、施工後に不具合が出たときの連絡が遠回りになります。
自社に工事部門を持っている会社は、中間マージンが乗らないぶん価格面でも有利になりやすく、何より不具合対応が速い。
「工事はどなたが来られますか」と一言聞くだけで、体制はだいたい分かります。
3. 中古やレンタルの選択肢も出してくれるか
新品のリースしか提案してこない業者は、少し警戒しています。
予算が厳しいと伝えたときに、中古機や台数構成の見直しといった代替案が出てくるかどうか。
そこにその会社の姿勢が表れます。
中古機を扱うには古物商の許可が必要ですので、扱っている会社は許可番号を持っているはずです。
4. 保守や故障対応の費用がどこまで含まれるか
見積の金額だけを比べても意味がありません。
故障したときの出張費、部品代、電話回線の手続き代行が含まれるのかどうかで、実際の負担は変わります。
保守契約を別立てにする会社もあれば、一定期間の対応を込みにしている会社もあります。
ここは必ず書面で確認してください。
5. 電気通信工事業の許可を持っているか
ビジネスホンの設置は電気通信工事にあたります。
一定規模以上の工事を請け負うには、建設業の許可が必要です。
許可の有無は、国土交通省の建設業者・宅建業者等企業情報検索システムで誰でも調べられます。
先ほど例に挙げた会社であれば、東京都知事許可の番号がサイト上に記載されているので、そのまま照合できます。
見積書に社名と許可番号が書いてあるかを見て、気になれば5分ほどで確認する。
これだけでも、業者選びの精度は上がります。
まとめ
10名規模のビジネスホンについて、リースと購入を数字で比べてきました。
要点を振り返ります。
- 10名分の一式は、新品中級グレードでおよそ78万円から90万円が目安
- リース料率は5年2.0%、6年1.7%、7年1.5%が一般的な水準
- 総額は一括購入より15万円から20万円ほど高くなる(20%から26%増)
- 法定耐用年数は6年だが、実際の使用可能年数は10年から15年
- 10年使う前提で年あたりコストを出すと、購入が明確に有利になる
- ただし手元資金を残したい、数年内に移転予定があるならリースにも十分な合理性がある
金額だけを見れば購入が有利です。
けれども、資金繰りは会社ごとに事情が違います。
15万円の差額を「高い」と見るか、「初期80万円を出さずに済む保険料」と見るかは、経営判断の領域です。
ひとつだけ、共通してお伝えしたいことがあります。
どちらを選ぶにしても、契約満了時に何が起こるのかを、契約前に確認しておいてください。
返却なのか、再リースはいくらなのか、買取はできるのか。
ここを確認しないまま5年後、7年後を迎えて、流れで新しいリースを組み直す。
これがいちばん静かにコストが膨らむパターンです。
見積は無料で出してくれる会社がほとんどですし、現地調査まで来てくれるところも多くあります。
相場観をつかんだうえで2社か3社に声をかけ、金額だけでなく体制まで含めて比べてみてください。




