「政治の話は難しくて、自分には関係ない…」
そう感じている働く女性は少なくないかもしれません。
しかし、毎日の仕事、子育て、介護、そしてあなた自身のキャリアプラン。
そのすべてが、実は政治の決定と深く結びついています。
特に、意思決定の場に「女性」が少ない日本の現状は、多くの働く女性が抱える「もどかしさ」や「生きづらさ」の根本的な原因の一つかもしれません。
この記事では、女性政治家が増えることで、私たちの暮らし、特に働く女性の日常が具体的にどう変わるのか、国内外のデータや事例を交えながら、分かりやすく解説していきます。
政治を「自分ごと」として捉え、より良い未来を選択するためのヒントがここにあります。
目次
日本の女性政治家の現状:世界から取り残されるジェンダーギャップ
まず、日本の現状を客観的なデータで見ていきましょう。
残念ながら、日本の政治分野におけるジェンダーギャップは、国際的に見ても深刻な状況です。
データで見る日本の女性議員比率
2025年11月時点の日本の国会における女性議員の割合は、衆議院で15.7%(465人中73人)、参議院で29.4%(248人中73人)です。
これは、列国議会同盟(IPU)が公表している世界の国会議員(下院)の女性比率ランキング(2025年11月1日時点)では、下院・一院制議会を持つ国・地域の中で日本は140位に位置しており、世界平均 27.1% を大きく下回る水準です。
世界の女性議員比率(下院)トップ5と日本の比較 (2025年11月1日時点・IPU「Monthly ranking of women in national parliaments」)
| 順位 | 国名 | 女性議員比率(下院) |
|---|---|---|
| 1 | ルワンダ | 63.8% |
| 2 | キューバ | 55.7% |
| 3 | ニカラグア | 55.0% |
| 4 | ボリビア(多民族国) | 50.8% |
| 5 | メキシコ | 50.2% |
| 140 | 日本 | 15.7% |
(出典:列国議会同盟(IPU)Parline「Monthly ranking of women in national parliaments」(2025年11月1日時点)、同「Japan – House of Representatives」「Japan – House of Councillors」のデータを基に作成))
なぜ日本の女性政治家は増えないのか?3つの構造的課題
では、なぜ日本では女性政治家が増えないのでしょうか。
その背景には、根深い構造的な課題が存在します。
- 立候補への高いハードル
政治家になるためには、地盤(後援会組織)、看板(知名度)、カバン(資金)の「三バン」が必要と言われますが、これらは伝統的に男性が有利な構造になっています。
また、候補者選定が旧来の男性中心のネットワークで行われることが多く、女性が参入しにくいのが現状です。 - 仕事と家庭の両立の困難さ
選挙活動や議員活動は、時間的にも精神的にも非常に拘束が厳しい仕事です。
いまだに家事・育児の負担が女性に偏りがちな日本社会において、女性が政治家を目指すことは、キャリアと家庭生活の両立という二重の困難を伴います。 - 政治の場におけるハラスメント
有権者や他の議員からの性的なヤジや、ジェンダーに基づくハラスメントが後を絶ちません。
このような環境が、女性が政治家を志す意欲を削いでいるという側面も指摘されています。
女性政治家が増えると暮らしはどう変わる?働く女性への5つのメリット
もし、こうした課題を乗り越え、政治の場に女性が増えたら、私たちの社会や暮らしはどのように変わるのでしょうか。
特に働く女性にとって、多くの具体的なメリットが期待できます。
メリット1:あなたの「困った」が政策に変わる
女性政治家は、自身の経験から、これまで見過ごされがちだった生活者の視点や、女性特有の課題を政策に反映させる力を持っています。
待機児童、病児保育、学童問題の解消促進
子育てをしながら働く女性にとって、待機児童問題や、子どもが急に熱を出したときの預け先がない「病児保育」、小学校の「学童問題」は死活問題です。
女性政治家が増えることで、こうした当事者の切実な声が政策の優先順位を上げ、予算配分や制度設計に反映されやすくなります。
結果として、より利用しやすく、質の高い子育て支援サービスの拡充が期待できるでしょう。
男女間の賃金格差の是正
日本の男女間の賃金格差は、先進国の中でも大きいことが知られています。
女性政治家は、同一労働同一賃金の徹底、女性が多い職種の待遇改善、キャリアアップを阻む「ガラスの天井」の撤廃など、格差是正に向けた法整備や政策を強力に推進する原動力となります。
メリット2:働き方の選択肢が広がる
女性は、出産、育児、介護といったライフイベントによってキャリアの中断を余儀なくされるケースが少なくありません。
多様な生き方を経験してきた女性政治家が増えることは、画一的な働き方を見直すきっかけになります。
テレワークや時短勤務など柔軟な働き方の推進
フルタイムで毎日出社するという従来の働き方だけでなく、テレワーク、時短勤務、フレックスタイム制など、個々の状況に応じて柔軟に働ける制度の導入が、企業文化として根付くよう後押しします。
これにより、育児や介護と仕事の両立がしやすくなり、女性がキャリアを諦めずに済む社会へと繋がります。
「男性の育休」が当たり前の社会へ
女性の活躍推進は、男性の働き方改革と表裏一体です。
女性政治家は、男性の育児休業取得を義務化したり、取得しやすい職場環境を整備したりする政策を推進する傾向があります。
男性が当たり前に育児に参加する社会は、女性の負担を軽減し、結果的に女性の社会進出を後押しします。
メリット3:多様な価値観が社会のイノベーションを加速させる
意思決定の場に多様な背景を持つ人々がいることは、より公平で、革新的な社会を築く上で不可欠です。
介護や医療などケア労働の価値向上
これまで家庭内の無償労働と見なされがちだった介護や看護といった「ケア労働」の重要性に光が当たり、公的なサポートの拡充や、従事者の待遇改善といった政策が進むことが期待されます。
これは、多くの女性が担い手となっている分野であり、社会全体のセーフティネットを強化することにも繋がります。
性暴力やハラスメント対策の強化
DV(ドメスティック・バイオレンス)、性暴力、職場でのセクシャルハラスメントなど、女性が被害者となりやすい問題への対策が、より当事者の視点に立って強化されます。
刑法改正や相談体制の充実、加害者への教育プログラムなど、これまで声が届きにくかった分野の政策が進展するでしょう。
メリット4:次世代の女性たちのロールモデルになる
テレビや新聞で女性の首相や大臣が活躍する姿を見ることは、子どもたち、特に若い女性たちに大きな影響を与えます。
「政治家は男性の仕事」という無意識の偏見(アンコンシャス・バイアス)が取り払われ、「自分もリーダーになれるかもしれない」という夢や希望を育むことに繋がります。
多様なロールモデルの存在は、次世代の女性たちの政治参加を促す、未来への投資なのです。
メリット5:経済成長にもプラスの影響
女性の活躍は、社会の公平性だけでなく、経済的な合理性からも重要です。
国際通貨基金(IMF)の調査では、ジェンダーギャップを解消し、女性の労働参加が進むことで、国のGDP(国内総生産)が大幅に向上する可能性があると指摘されています。
女性政治家が増え、女性の活躍を後押しする政策が実現すれば、眠っている潜在的な労働力を引き出し、日本経済全体の活性化に貢献することが期待できるのです。
海外の事例から学ぶ:女性リーダーが社会を変えた実例
世界に目を向けると、女性リーダーが社会にポジティブな変化をもたらした事例が数多く存在します。
ニュージーランド:共感のリーダーシップで国を導いたアーダーン元首相
ジャシンダ・アーダーン元首相は、在任中に出産・育児を経験し、その経験を政策に活かしました。
彼女が推進した、父親も含む育児休業期間の延長や、子育て世帯への支援拡充は、多くの国民から支持されました。
また、コロナ禍やテロ事件の際には、国民に寄り添う「共感のリーダーシップ」を発揮し、国難を乗り越えたことで世界的に高く評価されました。
アイスランド:「男女平等世界一」を維持する国の政策
世界経済フォーラムのジェンダーギャップ指数で長年1位を維持するアイスランドは、政治分野でも女性の活躍が目覚ましい国です。
同国では、企業の役員に一定割合の女性を登用することを義務付ける「クオータ制」や、男女間の賃金格差をなくすための「同一労働同一賃金証明制度」などが法制化されています。
政治の場に女性が多いことが、ジェンダー平等を社会の隅々まで浸透させる強力なエンジンとなっている好例です。
知っておきたい課題と視点:「女性なら誰でも良い」わけではない
もちろん、女性政治家を増やすことの重要性を強調する一方で、いくつかの重要な視点も忘れてはなりません。
クオータ制は逆差別?目的と効果を正しく理解する
候補者や議席の一定割合を女性に割り当てる「クオータ制」については、「能力ではなく性別で選ぶのは逆差別だ」という批判もあります。
しかし、クオータ制の本来の目的は、長年の構造的な不平等を是正し、女性がスタートラインに立つための「一時的な積極的格差是正措置」です。
多くの導入国で、政治分野におけるジェンダーギャップ解消に大きな効果を上げており、多様な民意を反映させるための有効な手段の一つとして議論されています。
重要なのは「多様性」の確保
最も重要なのは、「女性」という属性だけで判断するのではなく、個々の政治家の政策、理念、資質を見極めることです。
また、女性の中にも多様な考え方や立場があります。
目指すべきは、性別だけでなく、年齢、経歴、性的指向など、さまざまな背景を持つ人々が意思決定に参加する、真に「多様性」のある社会です。
女性政治家を増やすことは、その大きな一歩と言えるでしょう。
私たちの未来のためにできること:政治を「自分ごと」にする第一歩
「でも、私一人が何かしても変わらない…」と感じるかもしれません。
しかし、社会を変える力は、私たち一人ひとりの小さなアクションの積み重ねから生まれます。
STEP1:知る – 候補者の政策や実績を調べる
まずは、自分の選挙区の候補者が、ジェンダー平等や女性の働き方についてどのような考えを持っているか調べてみましょう。
選挙公報やウェブサイト、SNSなどをチェックするだけでも、多くの情報が得られます。
例えば、ニュースキャスターとしての経験を持ち、教育や女性の社会進出といった分野で活動してきた畑恵氏のような政治家がどのような政策を掲げているのかを調べてみるのも、政治を身近に感じるための良いきっかけになるでしょう。
STEP2:参加する – 選挙で意思表示をする
選挙は、私たちの意思を政治に反映させる最も重要で、基本的な権利です。
投票に行くことは、未来の社会のあり方を決めるための、パワフルなアクションです。
あなたの一票が、社会を変える力になります。
STEP3:声を上げる – 日常の会話から社会は変わる
政治の話をタブー視せず、家族や友人と「働きやすくなった?」「子育て支援、どう思う?」といった日常の会話の中で話題にしてみましょう。
SNSで自分の考えを発信するのも良いでしょう。
社会の空気を変えていくのは、こうした一人ひとりの小さな声の集合体なのです。
まとめ
女性政治家が増えることは、単に議席の男女比を是正するだけの問題ではありません。
それは、これまで政治の中心から置き去りにされてきた、私たちの生活に根差した切実な課題を解決し、社会全体の仕組みをより公平で、持続可能なものへと変革していくための重要な鍵です。
待機児童問題、賃金格差、キャリアと家庭の両立…。
あなたが日々感じている「もどかしさ」は、政治の力で解決できるかもしれません。
この記事をきっかけに、少しでも政治を「自分ごと」として捉え、未来を選択するアクションに繋げていただければ幸いです。
私たちの暮らしの未来は、私たち一人ひとりの手にかかっているのです。




